『暗号解読』感想
暗号解読(上) (新潮文庫) | サイモン シン, Singh, Simon, 薫, 青木 |本 | 通販 | Amazon
暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3) | サイモン シン, Singh, Simon, 薫, 青木 |本 | 通販 | Amazon
この本を読んだ。かなり面白かった!
古代から現代に至るまで暗号にまつわる歴史上のエピソードを次々と紹介していく。 新しい暗号が生まれる、それを解読する方法が生まれる、さらに強い暗号が生まれる…。
頻度分析というテクニックで単純なアルファベットの置き換えは容易に解読できる。この本のすごいところは、数式を出さずにていねいに解読のやり方を実例で解説しているところだ。なるほど、こうやって解読されてしまうのかと楽しく読める。
解読されにくくするために、複雑な暗号が作られたりするのだが複雑になるほど解読者も手間がかかるし、解読ミスなども生じる。 本当はもっと強い暗号が発明されているが、面倒なので弱めの暗号をお手軽に使うのが流行ったりしていて、暗号の強さがすべてではないんだなとわかった。
どれだけ強い暗号を作ってもその解読方法(鍵)の事前共有が必要なため、遠い場所にどうやって効率よく鍵を運ぶかが課題になる(鍵配送問題)。この問題に対するひとつの答えとして公開鍵暗号方式が発明される。現代のコンピューターの暗号では当たり前のように使われている方式もこうやった背景から生まれたのかとわかってなるほど感あった。
あと、暗号というのは政治・軍事などに大いに利用されているため、新しい暗号を発明してもそれが長い間表に出ることがなかったり、 通信を暗号化したい個人vs通信を傍受したい政府という対立の構図による問題がでてきたりする。このあたりは 現代でもずっと争点となっているところなので考えさせられる。ダークウェブとかそういうのにも通ずる。 暗号分野において多いな貢献をしていても政治的な理由で不当な評価を受けたり、同性愛者だという理由で社会的に制裁を受けたりと人間味のある(?)エピソードも多かった。理論が絶対的な強さを持つ暗号という分野でもそれを使うのが人間である限りこういうことは起きるんだな〜今も昔も…。