感想から批評へ
今年に入ってから見た作品の感想を書き残す機会が増えてきた。 感想文の出来は良くても悪くても特に何か評価されるわけでもないし、個人の感想だから正しい間違いもないのであまり深く考えずに書けるのは良い。
しかし、どうせ感想を書くならカッコよく決めたいという欲も出てくる。 「おもしろかった」「かわいかった」……。 駄目ではないが……もっとこう、他にないの?と自問してしまう。 上手い感想の書き方ってあるのかなと考えてると「批評」という言葉を思い出した。 なんとなく「感想」の格式高い版のような印象があったからだ。そういう印象はあるけど実際どういうものかは全く知らない。 わからないものはまず入門書から!ということで次の本を読んだ。
批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書)
この本は「批評って何をするの?」というところからやさしく解説をしてくれる。
批評というのは、何をするものなのでしょうか? …(中略)… ものすごく雑にまとめると、作品の中から一見したところではよくわからないかもしれない隠れた意味を引き出すこと(解釈)と、その作品の位置づけや質がどういうものなのかを判断すること(価値付け)が、批評が果たすべき大きな役割としてよくあげられるものだと思います。
では具体的に批評をどうやっていくか。 色々あるけどこうやって読むと切り口を見つけやすいよ、といったヒントをこの本はたくさん与えてくれる。 この本の著者はシェイクスピアや舞台芸術史を専門としているので、出てくる例もシェイクスピアや他海外の作品が多い。だから自分が普段見てる萌えアニメとは全然フィールドが違うのだが、この考え方はアニメでも使えるなというのもある。 たとえば、一見似つかないようなふたつの作品も固有名詞を取り払って要素分解すれば物語の骨組みが似ていて、作品同士に何らかの関連が見いだせる場合がある、という解説があってこれはアニメ視聴時に「実質〇〇」や「今期アニメの絆」と呼ぶのに似ている。
だが、これを読んですぐに明日からアニメの批評やります!とは言えない。 確かにこの本では批評をやりやすくするテクニックを多く紹介してくれたものの、本格的にやろうとすると作品の細かい要素を頑張って洗い出したり、関連しそうな多くの作品を知ることが求められるため、正直(めんどくせ〜〜〜〜〜〜!)って思ってしまった。 こう思った時点で自分に批評は向いてないのだろう。 もともとアニメの感想をもう少し上手く書きたいな程度の動機なのでそこまで頑張って批評の修練をする気にはなれないが、簡単に真似できそうな切り口を取り入れてみるとか、少しずつ少しずつ批評メソッドを取り入れていくぐらいならできるかも。
プロのイラストレーターが書いた技法書を読んでもすぐに同じような絵が描けるわけではないし、内容が高度すぎてこんなの無理!ってなるのと同様と考えると希望はあるんじゃないかと思い始めた。 批評スキルもまずは既存のよく使われる型を真似していくところから始めて少しずつ積み上げていけば、(義務感からではなく)自然と過去にはない読み方ができたり、見る作品の幅が広がったりするのかもしれない。