p-hone p-hone.info

おじいちゃんのブログ

私には今年90歳になる祖父がいる。 昔から新しいモノ好きで、アマチュア無線にハマりその後MS-DOSなどを経て電子工作やコンピューターを趣味としている。 私が物心ついたときにはすでにアマチュア無線の機材に囲まれた部屋で日々を過ごす趣味人という印象だった。 私にコンピューターを教えてくれたのもやはり祖父だった。

祖父のおかげで自分が小学校に上がる頃には固定インターネット回線が開通し、早くもインターネットに浸かることができた。 また、いわゆる自作PCのやり方を教えてくれた。 そして、このブログの過去記事が語るように私はインターネットですくすくと育ち、インターネット人間となった。

私は同世代の中では早く個人サイトを持っていたわけだが、それを知った祖父が「自分もホームページを作りたいんだけど」と相談を持ちかけてきた。祖父はMicrosoft Wordで無線や電子工作に関する近況日記?を書き記していて、(無線仲間と?)共有したかったようだ。今まで教えてくれたおじいちゃんに対して今度は自分が教える側になれるなんて、と当初は自慢気だった。 WordからHTMLへの変換、ホームページビルダーの使い方、レンタルサーバーの契約、FFFTPによるアップロード方法……多くの手順や知識を一緒に操作しながら教えた。

その後もホームページの更新でトラブルがあったときの対応や、ブログの開設など多くの作業を手伝った。 近況レポート(ブログ)に祖父が何を書いていたのかはほぼ知らなかった。画面を見ながら教えてると内容がチラ見えするのだが、(よくわからないけど無線のこととか書いてるんだな)程度で気に留めることもなかった。とにかく(パソコンに詳しい俺に任せろ!)という気持ちで知識をひけらかす格好の場として臨んでいた。

年月が経ち、社会人になってから実家を離れ、このp-hone.infoという個人サイト(ブログ)を書くようになって ふと、祖父のブログのことを思い出した。アマチュア無線には”コールサイン”というものがあり、現代のSNSでいうハンドルネームのようなものだ。昔から祖父が何度もマイクに向かって口にしていたコールサインは自然と記憶に刻まれていた。 検索エンジンに打ち込んでみるとすぐに祖父のブログがヒットした。

そのブログは今こそ更新が止まっているが結構な数の記事があって、カテゴリー欄を見て思わず笑ってしまった。 電子工作の記事しかない。

記事の内容をみてみると、ひたすらに電子工作のパーツを買い集めてきては基板?に接続して◯◯MHzといった画面を出している記事が並んでいた。私はコンピュータにはある程度詳しいが、電子工作はさっぱりわからない。 でもとにかく、趣味でやっていることを200記事以上にわたって記録し続けていたことはわかった。

これを見て……感動している自分がいた。私(や周囲の仲間たち)は何かしらの趣味に打ち込む「オタク」的な人が多い。 でも、そんなオタク趣味も何歳まで続くのか…、と歳を重ねるに連れて不安に襲われることもよくあった。 そんな中で70、80歳を超えても趣味に打ち込み、インターネットにしっかりと記録している人を想像以上に身近で見つけてしまったからだ。

思い返せば祖父は近況レポート以外にも毎日PCで日記をつけていて、当時は(よくやるなぁ)程度で見ていたのだが、 気づけば私も毎日PCで日記をつけている。これは『いろとりどりのセカイ』というゲームの影響であって、祖父から「日記をつけるといいよ」と言われたわけではない。ブログを書くのは楽しいよねという話もされたことはない。それなのに私もこうやってブログを書く習慣がついている。ブログ筋ってもしかして遺伝する?

コールサインで検索していると、祖父の無線仲間のブログも見つかった。 「今日は仲間と花見に来ました」とかいって桜の木を背景に持ち寄った電子工作の機器?を並べている写真でさらに笑っちゃった。 これじゃあ、アニメキャラが印刷されたウェファーチョコやアクリルスタンドを掲げた風景をSNSにアップするのと同じじゃないかって。でも、笑うと同時に勇気づけられた。趣味に生きるってこういうことなのかな…と。 こうやって年老いても趣味を続け、仲間と交流したりして……ブログを書き続けられるといいね。