ゼロ年代を振り返る 〜Flash黄金時代〜
すこし前にサントリーがFlash Back Memoriesというプロモーション動画を出してネット上で話題になった。
この映像では2002年前後、いわゆるFlash黄金時代と称される時代の作品がたくさん出てきて懐かしさを感じられる内容になっている。 自分自身もFlash黄金時代のインターネットで育ったのでとても興味深く、当時の思い出を綴りたくなった。
最初に出会ったのは別府鉄輪地獄変というFlashだった。 かわいい絵柄でありながら突然血が吹き出したり内臓が飛び出したりする猟奇的な作品だ。 グロテスク要素だけでなく、北の国の工作員やKKKなどをモデルにした話があり社会的にも危ない領域に踏み込みまくった切れ味のある作品だった。
このFlashに出会ったとき、自分は年齢8歳、小学2年生だったので、細かい内容は全然理解していなかった。 だが、血が吹き出たりする映像なんて親は絶対見せてくれないし、学校でも絶対見られない。そういった 見てはいけないものを見ると興奮する ような感覚があった。子どもというのは自分の欲望に正直なので見てはいけないものを見たくなるし、大人から見るなと言われるほど反発したくなる。
そういった「子どもに見せたくない系」Flashは実にたくさんあった。 イラク戦争ネタのラディえもん、政治家をネタにしたムネオハウス、タレントの田代まさしをネタにした片翼の田代、とにかく歌詞がひどい死ね死ね団のテーマなど。 もちろん、Flashはこういったネタばかりだったわけではない。アート作品としてのFlashや、感動できる話、ゲーム、子どもが見てもわかるようなギャグなど様々なものがあった。だが、自分が当時を振り返っていちばん印象に残っていたのはこういったどこか”危うい”作品だった。
なぜ小学生が詳細を知りもしない政治や時事ネタのFlashに惹かれていたのか。 ひとつは前述した通り「見てはいけないものほど見たくなる」という気持ちだろう。家でも学校でもテレビでも誰も言ってないような内容がインターネットにはある、それだけでなんか新鮮でわくわくしていた。Flash以外のものも多く含むがそういったアングラ文化というのは魅力があったんだと思う。 もうひとつは、大人な世界への憧れ だったのかなと思っている。中学生が背伸びして洋楽を聴き始めるみたいなのに近いんだろうか、とにかく「自分は大人なコンテンツにも触れているんだぞ」と言いたいお年頃だったのかもしれない。実際Flashに出てくるネタを現実でも連呼してたら、親にかなり渋い顔をされた(それはそう)。
また、2002年頃はインターネット全体の雰囲気も今(2021年)とは違うように感じた。 Windows XPが出た後で多くの家庭にコンピュータが普及しつつあるが今のスマホ時代ほどインターネットにつなぐのが当たり前ではなかった微妙な時代。 インターネットは主要なメディア(テレビ等)とは切り離された感じがあった。だからこそインターネット上ではテレビでは放送できないような過激なネタをやろうぜ!という風潮が高まっていたのではないか。
2005年頃からは自分はオンラインゲームの世界に完全にハマってしまい、Flashも見なくなりアングラ文化にもあまり触れなくなった。 そこからの当時の自分の日記を読み返すと趣味も年相応のキッズという感じになり、2002〜2004年頃の大人世界への憧れみたいな要素は消えてしまった。 それは別に悪いことではないが、ときどき2002〜2004年頃の背伸びしてインターネットをしていた時期を思い返すとなんともいえないエモーショナルな気持ちになれて少し楽しい。